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生活習慣病
生活習慣病とは糖尿病や脂質異常症(高脂血症)、高血圧、高尿酸血症(痛風)など、生活習慣が発症の原因に深く関係する疾患を称しています。日本では、食生活の欧米化やライフスタイルの変化により、これら生活習慣病が増加の一途をたどっています。
生活習慣病は、程度の差異はありますが、いくつもの疾患が重なることが少なくありません。重なることによって、各々の疾患が悪化したり、動脈硬化を進行させて脳卒中や心筋梗塞などの重大な疾病をひきおこす危険性が高まります。
このような疾病をひきおこさないように、疾患の指摘を受けたら、たとえ自覚症状がなくても生活習慣を改善するための対策、つまり食事療法と運動療法を行いましょう。生活習慣改善での効果がない場合には薬物療法が必要となります。
血圧が高い状態が続くと、血管の壁が圧力によるダメージを受けます。すると血管の壁が厚くなったり、硬くなったりする動脈硬化の原因になり、狭心症や心筋梗塞、脳卒中、腎臓病などを引き起こしやすくなります。
高血圧の多くは遺伝的要因に加え、食生活(塩分の多い食事など)の乱れ、嗜好品(タバコ・お酒)の摂取過多、運動不足や精神的ストレスなどの環境的要因が重なって引き起こされると考えられています。
高血圧の治療は、まず適正な体重にし、適度な運動を心掛け、減塩に努めるなどの生活改善です。
また、薬を処方されたら、指示通りにきちんと飲むことも大切です。
一度薬を飲み始めたら、一生やめられないと思っている方が少なくないようですが、だんだんと良くなってくれば減らしたり、やめたりすることも可能です。薬がやめられるように日頃の摂生に努めることこそ大切なのです。
血液中のブドウ糖は、インスリン(膵臓から分泌されるホルモンのひとつ)の作用によって細胞に取り込まれてエネルギー源になったり、脂肪やグリコーゲンという物質に変えて肝臓や筋肉に蓄えられたりします。
しかし、何らかの理由で血液中のブドウ糖が細胞にうまく取り込めなくなり、血液中にブドウ糖がだぶついてしまった状態――それが糖尿病です。長期にわたり血液中のブドウ糖の過剰な状態が続くと、全身の血管に様々な問題が生じ、悪くすると心筋梗塞や脳梗塞、人工透析や失明、下肢・下腿切断など、深刻な事態にも陥ります。
また、糖尿病は自覚症状がほとんどないため、知らないうちに進行し、合併症が現れてから初めて気づくといったケースがしばしば見受けられます。
糖尿病は現在のところ、完治させることはできません。しかし、糖尿病そのものは治せなくても、血糖値を正常に保ち、また体重や血圧、血中脂質もあわせてよい状態に保てば、糖尿病による合併症、すなわち糖尿病性細小血管合併症(網膜症、腎症、神経障害)や動脈硬化性疾患(冠動脈疾患、脳血管障害、末梢動脈疾患)を起こさずに、あるいは進行を阻止することは十分に可能です。合併症をおこさなければ健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持することができるのです。
血糖値を正常に保つうえで重要になるのが、継続的な「コントロール」です。医師の指導のもと、まずは食事療法と運動療法を行います。これだけで正常値になる患者様もいらっしゃいます。糖尿病が進行していた場合、食事・運動療法だけでは血糖値がうまく下がらなかったりするような場合には内服薬による治療やインスリン療法を行うことになります。
脂質異常症は血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)が多過ぎる、または少な過ぎることです。以前は、高脂血症と呼ばれていましたが、脂質が低すぎる場合も問題視されるようになり、近年は脂質異常症と称されています。
脂質異常症を放置すると、動脈硬化が進行し、やがては心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす原因となります。脂質異常症は、遺伝的要因に加え、食生活(エネルギー過多)や嗜好品の摂取過多(喫煙・飲酒)、運動不足などの環境的要因が重なって引き起こされると考えられています。
脂質異常症の治療は、生活習慣の改善と薬物療法が基本です。
禁煙、栄養バランスのとれた食生活、適正体重の維持、適度な運動などの生活習慣の改善は、血中脂質を下げるだけでなく、動脈硬化の進行防止にも役立ちます。
高尿酸血症とは、血液中の尿酸が多くなり過ぎている状態です。尿酸は水分に溶けにくいため、血液中では尿酸塩として存在しています。尿酸が過多になると、針状の尿酸塩の結晶ができ、体のあちこちに溜まって、痛みを引き起こします。これが痛風です。
体の細胞は、毎日の新陳代謝で新しく作り変えられています。その結果、細胞の核からプリン体という物質が生成されます。このプリン体が、尿酸の元になります。
また、プリン体はレバー類、干し椎茸、魚卵類、えび、かつお、いわしなどに多く含まれています。そしてアルコール飲料は尿酸値を上昇させる作用があります。こうした飲食物を好む人は、尿酸値が高くなりやすい傾向があります。
高尿酸血症の治療は尿酸値を下げることです。
食事療法として、前記のようなプリン体を多く含む食品の摂取を控えめにし、バランスのよい食事を摂るようにします。また、禁酒・節酒を心がけましょう。特にビールはプリン体を多く含むので注意してください。肥満を解消することも大切ですので運動も行いましょう。
薬物療法では尿酸が体内で生成されるのを抑制する薬や尿酸の排泄を促す薬などを使います。
肥満、特に内臓まわりに脂肪がたまって、お腹がぽっこり出ている「内臓脂肪型肥満」の方は、血圧、血糖、脂質値などの異常をきたしやすく、その結果、高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病が重なりやすいことがわかっています。内臓脂肪型肥満があり(へその高さの腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上)、高血圧、高血糖、脂質異常症のうちの2つ以上が重なっている状態を「メタボリックシンドローム」と言います。
メタボリックシンドロームの患者さんでは、血圧、血糖、脂質などの値がそれほど高くなくても、それらが重なることで動脈硬化が一層進行しやすくなり、心筋梗塞や脳血管障害などの心血管疾患を発症する危険率を高くすることが知られています。