江戸川区 西葛西 おがはら循環器・内科 骨粗しょう症治療 骨密度 骨折 女性医師

骨粗しょう症について

現在多くの施設での骨密度測定は前腕、指や踵で行われておりますが、正確な骨密度測定検査は2重X線吸収法(通称DEXA法)を用いて腰椎と大腿骨頸部の骨密度を測定することとなっています。当院ではこの方法で骨密度測定検査を行っております。健康保険適応での検査費用は初診料込みで1500円~2500円です。測定結果に基づき必要な方には治療を開始しております。骨粗しょう症の診断・治療に興味や不安をお持ちの方は是非ご相談ください。

骨粗しょう症とは

骨粗しょう症とは、主に老化や閉経などが原因となって骨の中のカルシウムの量(骨量)が減少し、鬆(す)が入ったように骨がスカスカになり、もろくなる疾患です。わずかな衝撃でも骨折をきたしやすくなり、「骨折リスク」が高くなってしまいます(骨粗鬆症があると約2倍骨折しやすくなります)。そして、骨粗しょう症による骨折から「要介護状態」になる人が少なくなく、これも大きな問題です(いわゆる「寝たきり」の10人に1人は転倒・骨折が原因です)。

骨量は、20~30歳頃の若い時期をピークに、年を重ねるとともに減少していきます。
この骨量、ひいては骨密度(単位体積あたりの骨量)が減少をきたすことによって骨粗しょう症と言われる状態になり、背骨が体の重みでつぶれたり、背中が曲がったり、変形による圧迫骨折をきたしたり、ちょっとした転倒で骨折するといった事態を引き起こしがちになります。なかでも足の付け根の骨(大腿骨近位部)を骨折したりすると、体を支える働きが損なわれてしまうため、要介護状態にもなりかねません。
骨密度の減少を改善し、骨折リスクを大幅に減少させるためには専門的な治療や適切な生活改善を行うことが大切です。

特に女性は50歳になる前に一度は検査を

高齢の女性を中心に、骨粗しょう症は年々増加の一途をたどっています。
骨粗しょう症は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下する更年期以降に特に多く見られます。エストロゲンには、骨の新陳代謝に際して骨吸収を緩やかにし、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがあります。閉経して、このエストロゲンの分泌量が減少してきますと、骨吸収のスピードが速まるため、骨形成が追いつかず、骨がもろくなってしまうのです。そのため、閉経を迎える50歳前後から骨量は急激に減少し始めます。ですので、50歳になる前に一度は骨粗しょう症の精密検査を受けるよう、お勧めいたします。
一方では、偏食や極端なダイエット、喫煙や過度の飲酒なども骨粗しょう症の原因と考えられており、最近では高齢の女性だけでなく、若い女性の骨粗しょう症も問題視されています。

「FRAX」による骨折リスクの診断

“FRAX”(fracture risk assessment tool)とは、WHO(世界保健機関)が開発した「骨折リスク評価法」です。FRAXは40歳以上の人を対象にしており、この評価法を用いると、その人の今後10年間の骨折リスクの診断が可能になります。
インターネットでWHOのホームページにアクセスし、12の質問に答えると、自分自身の10年以内に骨折する確率(%)が、自動的に算出されます。FRAXは医療の現場でも、薬物療法を始めるかどうかの判断に使われることがあります。
チェック項目の1つ「大腿骨頸部の骨密度」については、体格指数(BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m))を入力しても判定が可能で、骨密度の測定が必要無いというのも特徴です。
FRAXで骨折リスクが高く出て心配な方は医療機関への受診をお勧めいたします。

FRAXの12の質問項目

  • 年齢
  • 性別
  • 体重
  • 身長
  • 骨折歴
  • 両親の大腿骨近位部骨折歴
  • 現在の喫煙の有無
  • 現在のステロイド服用、あるいは過去3ヶ月以上にわたる服用の有無
  • 関節リウマチの有無
  • 1型糖尿病、甲状腺機能亢進症、45歳未満の早期閉経など、骨粗しょう症を招く疾患の有無
  • ビール換算で毎日コップ3杯以上のアルコールを摂取するかどうか
  • 大腿骨頸部の骨密度(またはBMI)

骨粗しょう症の検査のいろいろ

骨粗しょう症の診断にあたっては、骨密度の測定、X線検査、身長測定、血液・尿検査などが行われます。

骨密度の測定
骨の強さを判定する際の重要な尺度の1つに骨密度があります。多くの施設で行われている前腕、指や踵での骨密度測定は値が不正確であり、現在は骨粗鬆症の正確な診断、治療効果の判定には2重X線吸収法(通称DEXA法)を用いて腰椎や大腿骨頸部の骨密度測定を行うことになっています。
当院では腰椎の側面計測も可能な、世界で最も正確に骨密度の測定ができる機器「DiscoveryA」(米国・ホロジック社製)を導入いたしました。正確な骨密度の測定、治療を希望される方はぜひご相談ください。
X線検査
主に背骨(胸椎や腰椎)のX線写真を撮り、骨折や変形が無いか、また「骨粗鬆化」の有無(骨に、鬆(す)が入ったようにスカスカになっていないか)を確認します。骨粗しょう症と他の疾患との鑑別に必要な検査です。
身長測定
25歳の頃の身長と比べて、どのくらい縮んでいるかを調べます。25歳時より4cm以上低くなっている場合は、それほど低くなっていない人と比べ、骨折する危険性が2倍以上高いという報告があります。
血液検査・尿検査
血液・尿検査によって骨代謝マーカーを調べることにより、骨の新陳代謝の速度がわかります。骨吸収を示す骨代謝マーカーの高い人では骨密度の低下速度が速いため、骨密度の値にかかわらず、骨折リスクが高くなっています。
DXA(デキサ)法
DXA法(dual-energy X-ray absorptiometry:二重エネルギーX線吸収測定法)は、高低2種類のX線を測定部位に照射することにより、その透過度をコンピュータで解析し、骨量を調べる測定法です。この方法では、骨量を単位面積で割った値で算出し、骨密度として表します。測定する骨は、主に腰椎(腰の骨)、大腿骨頸部(太ももの付け根部分の骨)などです。短い時間で済むうえ誤差が小さく、放射線の被爆量も少ないため、安全性に優れるというメリットがあります。
このためDXA法は現在、骨量測定における標準的な検査法として重視され、骨粗しょう症の精密検査や、治療の経過観察、また骨折リスクの予測において非常に有用です。『骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン』(骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン作成委員会)でも、DXA法を用いた計測が推奨されています。

骨粗しょう症の予防と治療

骨粗しょう症の発症には、加齢や閉経以外にも食事・運動習慣などが深く関係しています。そういう意味で骨粗しょう症は骨の生活習慣病とも言え、そのため食事・運動療法も骨粗しょう症の予防と改善には欠かせません。ただ、骨粗しょう症との診断を受けたなら治療の中心は薬物療法となります。

食事療法

骨粗しょう症の治療や予防に必要な栄養素は、骨の主成分であるカルシウムやたんぱく質、および骨のリモデリングに必要なビタミンD・Kなどです。
カルシウムは食品として700~800mg/日、ビタミンDは400~800IU/日、ビタミンKは250~300μg/日を摂取することが推奨されています。これらの栄養素を積極的に摂りながら、しかもバランスの良い食生活を送ることが大切です。
骨粗しょう症の人が避けるべき食品は特にありませんが、アルコールやカフェイン、リンなどの摂り過ぎには注意しましょう。
過ぎた量のアルコールを摂取すると、カルシウムの吸収を妨げたり、尿からのカルシウムの排泄量を増やしたりします。カフェインもまた、カルシウムの排泄を促します。リンを摂り過ぎると、血液中のカルシウムとリンのバランスを保とうとして骨の中のカルシウムが血液中に放出されてしまい、骨密度の減少を招きます。

リモデリング
骨を壊す働きをする破骨細胞が骨を吸収する一方で、骨を作る働きをする骨芽細胞が破骨細胞によって吸収された部分に新しい骨を作る「代謝作用」のこと。

積極的に摂りたい栄養素を多く含む食品

カルシウム
牛乳、乳製品、干しえび、しらす、ひじき、わかさぎ、いわしの丸干し、大豆製品、えんどう豆、小松菜、モロヘイヤ など
たんぱく質
肉類、魚類、卵、乳製品、大豆製品 など
ビタミンD
あんこうの肝、しらす干し、いわしの丸干し、すじこ、鮭、さんま、かれい、うなぎ、きくらげ、煮干し、干し椎茸、きくらげ など
ビタミンK
納豆、抹茶、ブロッコリー、きゃべつ、サニーレタス、モロヘイヤ、しゅんぎく、おかひじき、小松菜、ほうれん草、菜の花、かいわれ大根、にら など

運動療法

骨は運動をして体重負荷をかけることで増加し、丈夫になります。さらに筋肉を鍛えることで体をしっかりと支えられるようになり、バランス感覚も向上し、ふらつきが少なくなって転倒防止にもつながるため、運動療法は骨粗しょう症の治療に欠かせません。
骨量を増やすには、ウォーキングやジョギング、エアロビクスなど、中程度の強度の運動が特に効果的で、激しい運動をする必要はありません。散歩くらいでも十分に有効ですので、可能なら毎日、それが難しいのなら週に数回でも構いませんので、とにかく長く続けてください。運動量を少しでも増やそうとする心掛けが大切なのです。

薬物療法

病状が進んだケースでは、食事療法や運動療法に併せて薬物療法を開始します。
現在使われている薬には、骨の吸収を抑える「骨吸収抑制剤」、骨の形成(新しい骨を作る)を助ける「骨形成促進剤」、腸管からのカルシウムの吸収を促進して体内のカルシウム量を増やす薬などがあります。また、腰や背中などに痛みがある場合は、痛みを除去する薬も用いられます。
どんな薬を選び、いつから治療を開始するかについては、個々の患者様の年齢や症状の進み具合などを考え合わせながら、医師が判断します。
現在、治療に用いられている薬には、主に下記のようなものがあります。

ビスフォスフォネート製剤
骨吸収を抑制することによって骨形成を促進し、骨密度を増やします。骨粗しょう症の治療薬のなかでも有効性の高い薬です。ビスフォスフォネートは腸で吸収され、すぐに骨へと届きます。そして破骨細胞に作用し、過剰な骨吸収を抑制するのです。骨吸収が緩やかになると、骨形成が追いついて、密度の高い骨ができ上がります。
SERM(サーム:塩酸ラロキシフェン)
骨に対しては、女性ホルモンのエストロゲンに似た作用があり、骨密度を増加させます。しかし、骨以外の臓器(乳房や子宮など)には影響を与えません。
女性ホルモン製剤(エストロゲン)
女性ホルモンの減少に起因する骨粗しょう症に有効です。閉経期における様々な更年期症状を軽減し、併せて骨粗しょう症を治療する目的で用いられます。
副甲状腺ホルモン製剤
骨形成を促進して骨量を増やし、骨折を減少させる薬です。専用キットを用いて1日1回自己注射する薬と、週1回医療機関で注射する薬があります。複数個所の骨折が起こっていたり、骨密度が著しく減少したりしているなど、重症の患者さんに用いられます。
活性型ビタミンD3製剤
活性型ビタミンD3には、腸管からのカルシウムの吸収を促進して体内のカルシウム量を増やす働きがあります。また、骨形成も促進します。
ビタミンK2製剤
ビタミンK2は骨芽細胞に作用することで骨形成を促進し、同時に骨吸収を抑制することで、骨代謝のバランスを整え、骨の質を改善します。骨折を減少させる効果が認められています。
カルシトニン製剤
骨吸収を抑制する作用があり、強い鎮痛作用も認められています。骨粗しょう症に伴う背中や腰の痛みに用いられます。
抗RANKLモノクローナル抗体
破骨細胞は、骨芽細胞と結合することによって骨を壊す細胞になります。この結合する部分(RANKL)をブロックすれば、結合することができなくなるため、骨は壊れなくなります。このようにして骨が溶け出していく過程が遮断され、骨粗しょう症を治療することができると考えられています。
なお、この薬の特徴は、6ヶ月に1回の皮下注射で良い点です(6ヶ月製剤)。ただし、血中のカルシウム濃度が下がりがちなため、ビタミンD製剤やカルシウム製剤を毎日服用していただくようになります。